ChatGPTで使われていたGPT-3.5とは?特徴や活用場面を紹介

OpenAI社が開発したAIツールであるChatGPTでは、かつてGPT-3.5という大規模言語モデルが使用されており、チャット形式でAIと対話ができる点や、人間と会話しているかのような自然なやりとりが可能な点において、多くのユーザーからの注目を集めました。

現在は、ChatGPTではGPT-4をはじめとしたさらに高性能なAIモデルを使用しており、今後も改良が重ねられることが期待されています。

この記事では、ChatGPTでかつて使用されていたGPT-3.5の概要や、GPT-4との違い、主な活用場面などをご紹介します。

※本記事は、2024年12月時点の情報をもとに作成しています。

ChatGPTにも使われていたGPT-3.5とは

GPT-3.5とは、2022年11月30日にOpenAI社が発表した大規模言語モデルです。

これまでに提供されていたGPT-1、GPT-2、GPT-3よりも多くの学習内容を誇り、質問に対する応答や文章生成、翻訳といったやりとりを、まるで人間と行っているかのような自然な対応ができる点が特徴です。

OpenAI社は、提供開始と同時にGPT-3.5を搭載したAIツールである「ChatGPT」をリリースしました。チャット形式でAIと自然なやりとりができることから人気を集め、リリースから5日で利用者数は100万人を突破しました。

なお、GPT-3.5はChatGPTの無料版に搭載されていたため、誰でも無料で使用できました。

GPT-3.5の学習データの期間(最終更新日)

GPT-3.5には、2021年9月までの学習データが搭載されています。そのため、2020年に起きた出来事に関する質問などは、回答の精度の高さが期待できますが、2021年9月以降に起きた出来事に関する質問には答えられなかったり、誤った解答をしたりする可能性があります。

GPT-3.5とGPT3.5 Turboの違い

GPT3.5の中には、GPT-3.5 Turboというバージョンがあり、「gpt-3.5-turbo-1106」「gpt-3.5-turbo-0125」「gpt-3.5-turbo-instruct」といったモデルにさらに細分化されます。

学習データの期間はすべてGPT-3.5と同じく2021年9月までですが、コンテキストウィンドウ(AIモデルが一度に記憶できるトークン数)が異なります。

また、GPT-3.5 Turboでは処理速度も改良されており、OpenAI社では、GPT-3と比べて数倍~10倍ほど素早く応答できることを述べています。

現在はGPT-4以降のモデルが使用されている

ChatGPTは、現在GPT-3.5よりさらに処理性能を向上させたGPT-4、GPT-4o、GPT-4o miniが主に使用されており、GPT-3.5は2023年5月10日に廃止されました。

日常的なチャットのやりとりをするだけであれば、GPT-4はGPT-3.5と使用感に大差はないものの、推論機能を改良したことから、より信頼できる回答が期待できます。

また、ハルシネーション(事実とは異なる情報を生成すること)の回避率のスコアもGPT-4ではGPT-3.5よりも19~29ポイント高いことから、回答精度の高さも特徴でしょう。

参照:GPT-4 Technical Report|OpenAI

なお、OpenAI社がGPT-3.5とGPT-4を比較する際にさまざまなテストを行った結果は以下のとおりで、多くのテスト項目においてGPT-4が優れていることがわかります。

引用:GPT-4|OpenAI

ChatGPTにおけるGPT-3.5とGPT-4の違い

ここまで、GPT-3.5の概要やGPT-4が生まれた背景についてご紹介しました。ここからは、GPT-3.5とGPT-4の主な違いをご紹介します。

なお、本記事で例に挙げたプロンプト(指示文)では、ChatGPTに対して「あなたは〇〇です」と役割を指定したうえで、条件や入力文をもとに出力を命じる「深津式プロンプト」を参考に作成しています。

出力内容の精度

GPT-3.5でも質問に対する回答や文章の生成などは可能ですが、GPT-4ではGPT-3.5よりも大幅に回答精度を改良しているため、出力内容の精度に差が生じることがあります。

例えば、SEO記事のアウトラインの作成依頼を行った場合、GPT-4では以下のような内容が出力されます。

【プロンプト】

あなたは、マーケティング会社で働き、オウンドメディアを運営しています。
以下の条件と入力文をもとにSEO記事のタイトル・見出しを出力してください。

#条件
・各見出しはh2、h3、h4のタグを付与して構成してください

#入力文
以下の手順に沿って出力してください。
・「GPT-3.5とは」で検索するユーザーの検索意図やニーズを考察し、ペルソナを設定する
・ペルソナが「GPT-3.5とは」で検索する際に知りたいことを箇条書きでまとめる
・箇条書きでまとめた内容をもとに、SEO記事のタイトル・見出しの構成を出力する

【出力内容】

引用:ChatGPT

このように、GPT-4ではペルソナが興味・関心を持っている物事に基づいてタイトルや見出しを構成し、各見出しへのhタグもそのまま記事のアップロード時に使用できる形式で出力できています。

一方で、GPT-3.5では、正しい階層での見出しが構成できていなかったり、hタグではなく別のタグが使用されていたりするケースがあります。

また、GPT-3.5では、上記のようにあらかじめ指定した条件にそぐわない回答が出力されることもありましたが、GPT-4では条件を満たす回答を出力しやすくなっている点も特長です。

ただし、GPT-3.5でも4でも、内容が不自然な箇所が見られる場合があるため、生成後は必ず人間の目で確認することが大切です。

出力内容の情報量

GPT-3.5から4で回答精度が向上したこととあわせて、GPT-3.5とGPT-4では、出力内容に含まれる情報量にも差が生じることがあります。

例えば、企業のコーポレートサイトやオウンドメディア、ECサイトなどに掲載するFAQ(よくある質問)をGPT-4で作成した場合、以下のような回答が出力されます。

【プロンプト】

あなたは、マーケティング会社で働き、オウンドメディアを運営しています。自社で提供するマーケティング支援サービスの導入事例や、マーケティング情報を提供しており、サービス利用に関するFAQページを作成したいと考えています。以下の条件と入力文の内容をもとに、「よくある質問」と「回答」を1セットとして、4セット分の質問と回答の出力を行ってください。

#条件
・「よくある質問」には「1記事から依頼できますか?」というような書き方で、疑問符(?)をつけてください
・「回答」は200字以下で簡潔に記述してください

#入力文
1記事から依頼できますか?
→1記事からの依頼が可能なため、初心者の方にもおすすめです。
相談にはいくらかかりますか?
→相談はすべて無料です。
一部の業務のみ依頼することはできますか?
→ヒアリングのうえ、必要な業務のみ弊社で担当することも可能です。
Webコンサルティングとはなんですか?
→Webサイトの運用を支援するサービスです。

【出力内容】

引用:ChatGPT

このように、GPT-4ではあらかじめプロンプトに記述した内容に補足内容をプラスして文章を生成し、よりユーザーの疑問に寄り添った本格的なFAQの作成が可能です。

GPT-3.5では、質問に対する回答が一文で終わるなど、GPT-4よりも情報量の少ない回答が出力されるケースがありました。

GPT-3.5から4に移行したことで、プロンプトに沿った内容はもちろん、補足した内容を追加で生成できる点において、社内のFAQやマニュアル、ビジネスメール、資料作成などさまざまな文章生成の場面で活用しやすくなったといえます。

生成される文章のレベル

GPT-4では、GPT-3.5よりも推論能力を向上させていることから、GPT-3.5よりも生成される文章のレベルが高い点が特長です。例えば、文章の要約を依頼した際も、GPT-4では文章全体を読み取ったうえで、一部の内容に偏らずまんべんなく要約できます。

GPT-4を使用して文章を要約すると、以下のような回答が出力されます。

【プロンプト】

あなたは、PC販売会社で働き、オウンドメディアを運営しています。自社で提供するPC導入支援サービスの導入事例や、PCに関する情報を提供しており、SEO記事を要約して資料を作成したいと考えています。以下の条件と入力文の内容をもとに、要約文の出力を行ってください。

#条件
・要約文は300~400字程度で作成してください

#入力文
(記事の本文を追加)

【出力内容】

引用:ChatGPT

上記では、約10,000字の記事を400字程度に要約しています。このように、長文の記事も瞬時に指定した文字数に合わせた要約が可能です。

GPT-3.5では、指定した字数にそぐわない文章量で生成されたり、記事全体の内容が網羅されていなかったりするケースがあります。

なお、GPT-3.5、4ともに不自然な文章や誤字脱字といったミスは生じるため、必ず最後には人間の目で確認することが大切です。

画像などのファイルのアップロード

GPT-3.5では、テキストの入力のみが可能で、文章を通したやりとりのみが行えました。GPT-4では、テキストだけでなく画像や音声など複数のデータを同時に処理できるマルチモーダル機能が搭載され、アップロードした画像の内容をもとに質問を行うことも可能です。

また、GPT-3.5ではテキストの要約などを行う際に、プロンプト入力画面に直接文章を貼り付ける必要がありましたが、GPT-4ではMicrosoft Wordなどのドキュメントのファイルをアップロードできるため、ファイルの内容を読み取って要約ができます。

コンテキストウィンドウ

コンテキストウィンドウは、ChatGPTがチャットでのやりとりを進める中で、どれだけの情報を記憶できるかを表す指標です。GPT-4では、GPT-3.5よりもコンテキストウィンドウが大幅に増加しており、過去に行ったやりとりを踏まえた回答が可能になります。

そのため、GPT-3.5で生じることのあった「さっきプロンプトで伝えた情報を踏まえた回答が出力されない」「数回前のやりとりで話した内容が覚えられていない」「だんだん話がそれてしまう」といったチャット中の問題を解消しやすいでしょう。

出力内容の安全性

ChatGPTでは、犯罪やアダルトコンテンツなどに関わる危険なプロンプトに対しての応答を制限するよう禁止コンテンツを設け、それらにフィルタリングを設定していましたが、GPT-3.5ではユーザーがプロンプトを工夫することによって、すり抜けてしまうこともありました。

GPT-4では、このような禁止コンテンツに対する回答をより制限できるようフィルタリングが強化されています。

OpenAI社が行ったテストによると、GPT-3.5(GPT-3.5 Turbo)と比較して、GPT-4は禁止コンテンツに対して回答する確率を82%減少させることに成功しており、反対に機密性の高い内容のコンテンツ(医療に関するアドバイスや自傷行為など)に対してポリシーに沿って回答する確率が29%増加しました。

引用:GPT-4|OpenAI

入力可能な文字数(コンテキストサイズ)

GPT-3.5では、約8,000~12,000文字が入力でき、GPT-4では現在約12万文字が入力できます(2024年12月時点)。GPT-3.5では入力可能な文字数が少なく、ファイルもアップロードできなかったことから、長文の記事や論文を読み込ませて要約や内容の質問などを行う際に、複数回に分けてプロンプトを送信する必要がありました。

しかし、GPT-4では、文字数の上限が大幅に上がり、ファイルもアップロード可能になったことから、長文のテキストに対する質問や要約、翻訳などが手軽に行えます。

GPT-3.5の主な活用場面

ここまで、GPT-3.5の概要や、ChatGPTにおけるGPT-4との使用感の違いについてご紹介しました。すでにChatGPTではGPT-4に切り替わっていますが、GPT-3.5では以下のような用途で多くのユーザーに活用されていました。

チャット形式での気軽な質問

ChatGPTでは、チャット形式で気軽にAIに質問ができます。もちろん、精度の高い回答を得るために、丁寧にプロンプトを作り込むことでより役立つ回答が得られますが、「ミートソースの作り方を教えてほしい」や「足がむくむ原因が知りたい」「なぜ関ヶ原の戦いは起こった?」「雨の日に頭が痛くなるのはなぜ?」など一言の質問でも詳細な回答を瞬時にもらえます。

そのため、「Webで検索して時間をかけて調べるほどでもないが、手順や仕組みを知りたい」といった質問をする際に、GPT-3.5は役立っていました。

小説やストーリーの生成

引用:ChatGPT

GPT-3.5では、小説やストーリーの生成も可能でした。例えば、「ヒーローが子どもを助けるストーリーを作成してください」と指示すると、オリジナルのストーリーが自動的に生成され、「主人公には〇〇のような能力を与えてほしい」「〇〇のシーンの展開は〇〇のように変えてほしい」「〇〇のような文体で書いてほしい」などの要望をチャットで伝えることで内容や文章の書き方を修正できるため、理想のストーリーを簡単に作れました。

アイデア出し

GPT-3.5では、新しい企画のアイデアやブレインストーミングなどにも役立ちます。例えば、以下のようなアイデアを出す面でGPT-3.5は多く活用されていました。

  • キャッチコピーの作成
  • 新商品の開発アイデア
  • 業務効率化のコツ
  • プレゼンや提案書のアイデア
  • DIYのアイデア
  • 授業やイベント内容の考案
  • スケジュールの整理
  • 旅行プランの提案

など

ビジネス・プライベートを問わず、さまざまな用途でのアイデア出しに活用できるため、よいアイデアが浮かばずに悩み、時間を浪費してしまうといったリスクを防げました。

コード生成のサポート

「コードのバグや記述ミスの修正」でもご紹介したように、GPT-3.5ではコードの生成や既存のコードのバグの修正、改善案の提示、修正コードの提案などが行えました。

例えば、手作業で作成したコードがうまく機能せず、修正箇所が見つけられなかった場合にChatGPTに読み込み、「上記のコードが正常に機能しない理由を教えてほしい」とプロンプトを送ることで、入力されたコードをもとに修正箇所や最適なコードの例を提案してもらえます。

このようなコード生成のサポートが受けられることで、コーディング作業をより効率よく行えるようになりました。

文章の校正、翻訳

GPT-3.5では、自身が作成した文章や英文などを読み込ませることで、文章の校正や翻訳が行えました。

例えば、「あなたは校正・校閲のエキスパートです。以下の文章を校正し、文章の修正点や今後執筆する際の注意点を教えてください」といったプロンプトを入力することで、文章の校正とともに執筆アドバイスがもらえるため、ライティングの練習に役立ちます。

また、「以下の英文を翻訳してください」とプロンプトを入力することで英語の文章や論文などの英語→日本語への翻訳が行えるだけでなく、「以下の内容のメールを英語に翻訳してください」といった日本語→英語への翻訳も行えるため、ビジネスシーンや語学学習といった場面でも役立っていました。

なお、ここまでご紹介した内容は、現在使用されているGPT-4以降のモデルでも実施でき、より高速・高精度の回答が得られます。

そのほかのChatGPTの面白い使い方をご紹介している記事もあるため、ぜひあわせてご覧ください。

ChatGPT以外のおすすめAIツール

ここまで、ChatGPTにおいてGPT-3.5がどのように活用されていたのかをご紹介しました。このように、ChatGPTはビジネスやプライベートを問わずさまざまな場面で役立つツールですが、現在はChatGPT以外にも豊富なAIツールが展開されているため、ぜひ以下でご紹介するAIツールもお試しください。

Microsoft Copilot

Copilot(コパイロット)は、Microsoft社が提供するAIアシスタントです。ChatGPTと同様に、チャット形式でのやりとりや、高精度な画像生成AIであるDALL·E 3を用いた画像生成、文章の要約といった作業が行え、有料版であるMicrosoft Copilot ProやMicrosoft 365 Copilotでは、Microsoft WordやExcel、OutlookなどのOffice製品との連携が可能で、Word上でCopilotを利用しながら文章を生成するといった作業が可能です。

そのため、Office製品を頻繁に利用する方には特におすすめのAIツールといえるでしょう。

CopilotとChatGPTを比較した記事もあるため、ぜひあわせてご覧ください。

Stable Diffusion Online

Stable Diffusion Online(ステーブル ディフュージョン オンライン)は、画像生成AIであるStable Diffusionを使用した画像生成AIツールです。シンプルな画面構成が特徴で、写真風の画像やアニメ風の画像、ピクセルアートなどさまざまなテイストの画像を生成できます。

直感的に操作できる点が強みであるStable Diffusion Onlineですが、プロンプトは英文のみ対応しているため、注意が必要です(2024年12月時点)。日本語での入力はできないため、翻訳ツールなどを用いたうえで英文に直し、読み込ませる必要があります。

Gemini

Gemini(ジェミニ)とは、Googleが提供するAIツールで、かつては「Google Bard」という名称でした。GPT-4を超えるAIモデルといわれることもあり、ChatGPTと同様に注目を集めています。

GPT-4では、画像生成や音声処理にはDALL·E 3やWhisperといったAIモデルを使用していますが、Geminiは単体でテキストや画像、音声など複数のデータを同時に扱えるネイティブマルチモーダルを強みとしており、優れた学習能力を持っています。

2024年12月にはGemini 2.0がリリースされ、Googleの検索結果における「AI Overviews」でも活用されています。AI Overviewsは、Googleの検索結果を使用して検索キーワードに関する情報をまとめているため、ハルシネーションが起きづらい点が強みです。

Perplexity

Perplexity(パープレキシティ)は、情報の検索に特化したAIで、ChatGPTと同様にチャット形式で質問が行えます。

GPT-3.5や4では、AIモデルが学習したデータの期間によっては、正確な回答が得られないことがありますが、Perplexityでは、Web上の情報をもとに回答を生成するため、最新情報の検索も可能です。

ただし、ChatGPTにおける2024年12月時点での最新モデルであるGPT-4o・GPT-4o miniにおいては、Web検索機能のオン・オフの切り替えが可能なため、Perplexityと同様にWeb上のデータに基づいた回答が行えます。

まとめ

この記事では、ChatGPTでかつて使用されていたモデルであるGPT-3.5の概要や、GPT-4との違い、主な活用場面などをご紹介しました。

GPT-3.5は、現在のモデルと同じように、文章の要約や校正、翻訳だけでなく、アイデア出しやチャット形式での質問など、ビジネス・プライベートを問わずさまざまな用途で活用されていました。

ChatGPTでは、現在GPT-4をはじめさらに進化したモデルが使用されていますが、Microsoft CopilotなどChatGPT以外のAIツールも豊富に展開されているため、用途や使い勝手に合わせて、利用しやすいツールをご検討ください。

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